心理のくせと​投資判断を知る

  • レベル やさしい
  • 読む時間 約9分
  • 最終確認日 2026年10月11日
  • 投資を勧めるものではありません

このレッスンで分かること

  • 行動経済学が、​人の​判断に​「くせ」が​あることを​前提に​した​学問だと​説明できる
  • 損失回避、​現状維持、​同調などの​傾向が、​資料で​どう​説明されているかを言える
  • 積立やルール​決めなどを、​判断のくせと​結びつけて​考える​見方を​説明できる

先に読むとよいレッスン:損失との​向き合い方、リスク許容度と​資産配分を知る、SNSの​投資情報との​付き合い方

目次

判断のくせと​いう​考え方を知る

人の​判断には、​法則的な​偏りが​出る​ことがあります。​それを​調べる​学問が​あります。

点線の​下線が​ある語は、​押すと​意味が出ます。

消費者庁(出典「ナッジとインセンティブの行動経済学」を別のタブで開きます)の​サイトに​載る​講演資料​(京都先端科学大学の​講師が​作成。​2023年1月26日)は、を、​人間には​意思決定の​クセ​(バイアス)が​あることを​前提に、​失敗したり後悔したりする​現実的な​人間像に​基づいて、​経済や​社会の​問題を​分析する​学問と​説明しています。​この資料は、​人間は​認知能力と​情報処理能力の​両方に​限界が​あるため、​与えられた​条件の​中で​最適解を​求めるのではなく、​簡便な​手法で​満足できる​選択肢を​見つけようと​すると​説明しています。​その結果、​現実の​意思決定と​最適な​意思決定との​間に​ずれが​生じ、​法則的な​偏りが​発生すると​しています。

環境省(出典「ナッジ等の行動科学の知見に関するご説明資料」を別のタブで開きます)の​サイトに​載る​説明資料​(委託先の​三菱UFJリサーチ&コンサルティングが​作成)も、​損失回避、​現状維持、​保有効果などを​「人間​行動の​さまざまな​バイアス・​特性」と​して​一覧に​しています。​このレッスンは、​この二つの​資料に​書かれた​説明の​範囲で​用語を​紹介します。​投資の​場面への​当てはめは、​この教材の例です。

やさしく​言うと、​人は​計算どおりに​動くとは​限らず、​判断に​一定の​偏りが​出る​ことが​ある、と​いう​見方です。

要点

行動経済学は、​人の​判断に​クセ​(バイアス)が​あることを​前提に​した​学問です。​環境省と​消費者庁の​サイトに​載る​資料に、​代表的な​傾向が​整理され​ています。

損失回避と​いう​傾向を知る

同じ額でも、​得より​損を​大きく​感じる​傾向が、​損失回避です。

消費者庁(出典「ナッジとインセンティブの行動経済学」を別のタブで開きます)の​サイトに​載る​講演資料は、を​「利得よりも​損失を​より​大きく​感じる​傾向」と​説明しています。​環境省(出典「ナッジ等の行動科学の知見に関するご説明資料」を別のタブで開きます)の​サイトに​載る​説明資料は、​「利益を​得るよりも、​損失を​被る​ことを​避けようと​する​傾向」と​書いています。​言い回しは​違いますが、​どちらの​資料にも​説明が​あります。

説明資料は、​省エネレポート​(家庭に​送る、​電気や​ガスの​使い方を​知らせる​報告書。​この教材の​言い​換え)に​「損失を​強調した​メッセージ」を​使った​例を​挙げ、​「ものを​得る​喜びよりも​失う​痛みの​ほうが​強く​感じる」と​いう​行動経済学の​理論を​応用した​ものだと​説明しています。​同じ説明資料は、​まだ手に​入れていない​場合よりも、​既に​手に​入れている​場合の​ほうが​価値を​高く​感じる​傾向​(保有効果)も​挙げています。

架空の​例:​買った​値から​下がったとき

これは​架空の​数字です。​100万円で​買った​資産が、​80万円に​下がった​場合と、​120万円に​上がった​場合を​比べます。

  1. 下がった​場合の​損は​20万円、​上がった​場合の​得も​20万円で、​金額は​同じです。
  2. 資料の​説明に​当ては​めると、​損失回避が​あれば、​同じ20万円でも、​損の​ほうを​大きく​感じる​ことになります。
  3. 大きく​感じる​ほど、​損を​避ける​判断に​気持ちが​傾く​可能性が​あります​(この​教材の​例。​実際の​行動は​人に​よって​違います⁠)⁠。

金額は​同じ20万円でも、​感じ方は​同じとは​限りません。

やさしく​言うと、​同じ金額でも、​「得した」より​「損した」の​ほうが​強く​心に​残る、と​いう​傾向です。​損の​計算は、​レッスン​「損失との​向き合い方」で​扱いました。

要点

損失回避は、​利得よりも​損失を​大きく​感じる​傾向です。​環境省と​消費者庁の​サイトに​載る​資料の、​どちらにも​説明が​あります。

確認問題

問題を​読み込んでいます。​表示されない​ときは JavaScript を​有効に​してください。

目先の​利益や​現状を優先する

将来の​利益より​今の​利益を​重く​見る​傾向や、​今の​ままを​選ぶ​傾向が​あります。

環境省(出典「ナッジ等の行動科学の知見に関するご説明資料」を別のタブで開きます)の​サイトに​載る​説明資料は、を、​将来の​利益よりも​今の​利益を​重視する​傾向と​説明しています。​消費者庁(出典「ナッジとインセンティブの行動経済学」を別のタブで開きます)の​サイトに​載る​講演資料にも​近い​説明が​あり、​遠い​将来の​大きな​利得よりも​近い​将来の​小さな​利得を​優先し、​特に​今この​時点の​利得を​過度に​重視すると​しています。

に​ついて、​講演資料は、​今の​状態に​非常に​大きな​価値を​感じ、​変える​ことで​より​大きな​利益を​得る​場合でも、​生じる​リスクを​過度に​嫌って​今の​状態にと​どまると​説明しています。​説明資料は、​現状を​改善する​選択肢が​あっても、​現状維持を​選んでしまう​傾向と​書いています。

説明資料は、​こうした​バイアスや​特性を​考える​場面の​一つに、​「退職後に​向けた​備えと​して​投資を​始めたいが、​手続きの​面倒さと、​証券会社・投信口座が​多すぎて、​何を​選べば​よいかわからない」と​いう​例を​挙げています。​同じ説明資料は、​選択肢が​多すぎると​選択が​難しくなる​傾向​(選択肢過​多)や、​情報量が​多すぎると​意思決定が​難しくなる​傾向​(情報過多)も​挙げています。

やさしく​言うと、​先送りしたり、​今の​ままを​続けたりするのも、​判断のくせの​一つとして​説明され​ています。

要点

今の​利益の​重視​(双曲割引)と、​今の​状態にと​どまる​傾向​(現状維持)が、​資料で​説明され​ています。​選択肢や​情報の​多さも、​判断を​難しくします。

周りや​目に​入る​情報の影響

周りの​人の​行動や、​身近な​情報が、​自分の​判断に​影響する​ことがあります。

環境省(出典「ナッジ等の行動科学の知見に関するご説明資料」を別のタブで開きます)の​サイトに​載る​説明資料は、を​「周囲の​人の​行動を​見て​同調するように​意思決定する​傾向」と​説明しています。​省エネレポートに​「他の​世帯との​比較」を​入れた​例では、​この同調性・社会規範を​使い、​所属する​集団内の​他の​メンバーの​実態と​望ましい​水準の​理解に​役立てると​しています。

消費者庁(出典「ナッジとインセンティブの行動経済学」を別のタブで開きます)の​サイトに​載る​講演資料は、​(より​望ましい​選択に​気づかせる​誘導)の​一つである​社会比較の​例と​して、​歩数の​実験を​紹介しています。​お金の​話では​ありませんが、​他の​人の​歩数も​知らせた​グループの​ほうが、​歩数の​増え方が​大きかったとし​ています。

環境省の​サイトに​載る​説明資料は、​身近な​情報や、​すぐに​思い浮かぶ知識を​もとに​意思決定を​行う​傾向​(近道に​よる​意思決定の​一つで、​利用​可能性​ヒューリスティクス)と、​最初に​与えられた​基準値​(アンカー)に​意思決定が​影響される​傾向​(アンカリング)も​挙げています。​講演資料には、​この二つの​記載は​ありません。

SNSで​流れる​投資情報や​周りの​人の​話も、​こうした​傾向を​通じて、​判断に​影響しうると​考えられます​(この​教材の​考え)。​SNSの​投資情報の​特徴と​確かめ方は、​レッスン​「SNSの​投資情報との​付き合い方」で​扱いました。

やさしく​言うと、​周りの​人が​しているから、​目に​した​話だから、と​いう​理由で​判断が​動く​ことがあります。

要点

周りの​行動に​同調する​傾向や、​身近な​情報、​最初の​数字に​影響される​傾向が、​説明資料で​整理され​ています。

判断のくせと​付き合う​工夫を知る

積立やルール​決めを、​判断のくせと​結びつけて​考える​見方が​あります​(この​教材の見方⁠)⁠。

各機関が​説明する​仕組みと、​関係しうる​傾向​(右の​列は​この教材の​見方。​各機関が​結びつけているわけでは​ありません⁠)

仕組み​(機関の説明⁠)関係しうる傾向
積立投資:あらかじめ決まった​金額を​続けて​投資する。​安いときに​買わなかったり、​高い​ときにだけ​買ってしまう​ことを​避けられる​(⁠金融庁⁠)値動きの​感じ方に​左右される傾向
先に​貯蓄に​回す:給料日に​一定額を​自動で​貯蓄用口座に​移し、​残りで​やりくりする​(⁠金融庁⁠)目先の​利益の重視
ルールを​決める​:リバランス​(値動きで​崩れた​割合を​元に​戻すこと)の​時期や​方法を、​毎回​変えず、​自分で​決める​(日本証券業協会⁠)状況に​よる​判断のぶれ

日本証券業協会(この節の出典の一覧へ)は、の​主観的な​要素と​して、​株価が​下がると​心配で​眠れないと​いった​場合は、​リスクを​取りすぎないよう注意が​必要だと​説明しています。​気持ちの​面も、​投資を​考える​材料の​一つと​いえます​(この​教材の考え⁠)⁠。

消費者庁(出典「ナッジとインセンティブの行動経済学」を別のタブで開きます)の​サイトに​載る​講演資料は、​ナッジを、​選択の​自由を​残したうえで、​より​望ましい​選択に​気づかせる​誘導と​説明し、​例に​情報提供や​社会比較を​挙げています。​一方で、​単純な​ナッジで​バイアスを​取り除く​ことは​容易ではないとも​述べています。

やさしく​言うと、​気合いに​頼らず、​決め方を​先に​決めて​おく​工夫は、​判断のくせと​結びつけて​見る​ことができます。​ただし、​くせが​消えるわけでは​ありません。

要点

積立、​先に​貯蓄、​ルール​決めなどは、​判断のくせと​結びつけて​見る​ことができます​(この​教材の​見方)。​バイアスを​取り除く​ことは​容易ではないとされ​ています。

確認問題

問題を​読み込んでいます。​表示されない​ときは JavaScript を​有効に​してください。

架空の​場面に​当てはめてみる

用語を​当ては​める​練習です。​自分の​行動を​決めつける​ものでは​ありません。

場面と、​関係しうる​用語​(この​教材の​架空の例⁠)

場面関係しうる用語
買った​値から​下がった​資産を、​損を​確定させたくなくて​売る​判断を​避けたくなる損失回避
投資を​始めたいが、​口座の​選び方が​分からず、​先送りが続く選択肢過多、​情報過多、⁠双曲割引
周りの​人が​話題に​しているから、​理由を​確かめずに​決めたくなる社会的証明​(同調効果⁠)

同じ場面でも、​どの傾向が​働くかは​人や​状況に​よって​違い、​複数が​重なることも​あります​(この​教材の​説明)。​資料が​示しているのは​傾向であり、​特定の​人の​行動を​説明する​ものでは​ありません。

個別の​事情に​合わせた​相談先と​して、​金融経済教育推進機構​(J-FLEC)(出典「専門家に相談したい | 金融経済教育推進機構 J-FLEC」を別のタブで開きます)は​「J-FLECはじめての​マネープラン」の​無料体験を​案内しています。​J-FLECは、​この無料体験で​提供される​情報は​相談員個人の​意見に​基づき、​個別の​金融商品・サービスに​ついて​提案・推奨する​ことは​できないと​注意しています。

やさしく​言うと、​用語は、​自分の​判断を​振り返る​ための​道具です。​当ては​まるか​どうかで、​自分を​責める​必要は​ありません。

要点

用語は、​判断を​振り返る​道具です。​傾向は​人や​状況に​よって​違い、​複数が​重なることも​あります。

理解度チェック

問題を​読み込んでいます。​表示されない​ときは JavaScript を​有効に​してください。

まとめ

このレッスンで​押さえたい​ことです。

  • 行動経済学は、​人の​判断に​クセ​(バイアス)が​あることを​前提に​した​学問です。
  • 損失回避は、​利得よりも​損失を​より​大きく​感じる​傾向で、​環境省と​消費者庁の​サイトに​載る​資料の​どちらにも​説明が​あります。
  • 将来の​利益より​今の​利益を​重視する​傾向や、​今の​状態にと​どまる​傾向も、​資料で​説明され​ています。
  • 周りの​行動に​同調する​傾向や、​身近な​情報に​影響される​傾向も、​説明資料で​整理され​ています。
  • 積立やルール​決めは、​判断のくせと​結びつけて​見る​ことができます​(この​教材の​見方)。​バイアスを​取り除く​ことは​容易ではないとされ​ています。

ステップ4の確認テスト

これで、​このステップの​レッスンは​最後です。​確認テストで、​理解を​確かめてみましょう。

10問。成績を​競う​ものでは​ありません。​結果は、​この端末にだけ​保存されます。

確認テストを受ける

このレッスンに出てきた用語

このカテゴリのレッスン

次に読む

次の​レッスンは、​まだ​用意し​ていません。

レッスン一覧へ戻る

出典と最終確認日

このレッスンの​事実は 2026年10月11日 に​確認しました。

ご利用にあたって

この教材は​一般的な​情報を​伝える​ための​もので、​特定の​商品の​売買や​投資を​勧める​ものでは​ありません。​税や​法律など​個別の​判断は、​金融庁や​国税庁などの​公的な​情報を​確かめたうえで、​専門家に​ご相談ください。